ラベンダー刈り取り機

 1984年から自家採油したラベンダーオイルから香水や石鹸をつくり、その後需要が高まるにつれて安定した油量を求められるようになりました。自然環境にとても影響される作物なので、その年の取れ高の増減をいつも気にしていなければなりません。
 毎年ラベンダーの栽培面積を増やしてきましたが、日本での収穫方法は鎌を使い人手で刈り取るしかありません。ラベンダー栽培で最も大変なのが手刈り作業。7月の暑い時期に腰を曲げながら行う作業や除草などの管理作業は一株ごとに手を入れて行わなければなりません。これらの事情も重なって、ラベンダーは富良野地方から姿を消していきました。
しかし、ラベンダーオイルの需要に応えていかなければなりません。鎌を使い人の手できれいに一株刈るのには、手慣れている人でもかなりの時間がかかります。そのうえ指を切らないよう注意し、刈り方も深刈りや浅刈りでは来年の咲き方にばらつきが出ます。人手を駆使しても難しいうえに、ラベンダーオイルが高価になってしまいます。
 日本ではラベンダー用の刈り取り機は製造していないのですが、機械化をしなければ先がないと思い、静岡のお茶刈り機メーカーに問い合わせたこともあります。また、帯広の機械工作メーカーに出向いてオリジナルの機械を作製するところまでいきましたが、高額のため断念しました。諦めきれず、稲刈り機のバインダーを工夫してオリジナルの機械をつくりましたが、結局上手くいきませんでした。
 メンテナンスのことなどを考えると、地元か国内の農機具工作メーカーと思っていましたが、難しいようです。そうなれば海外に飛ぶしかありません。海外では機械化が進んでいることは知っていましたが、特に交流もなく、ただ海外に行っても単なる視察研修では意味がありません。
 刈り取り機があったとしてもどの程度の大きさなのか?自社のトラクターに取り付けることが可能なのか?畝幅、株間は問題ないか?故障した場合など、気苦労はきりがありません。
 まずは自社の規模にあう刈り取り機を探さなければなりません。場合に依っては海外の機械をもとに再度作製も検討しなければなりません。そんな思いを巡らせながら海外へ渡りました。

せかいのラベンダー刈り取り機

豆刈り機や剪枝機のカタログ

当時この豆刈り機や剪枝機のカタログを
見ながら問い合わせたことを思い出します。

オーストラリア、イギリス、フランスを視察した際に見かけたラベンダー刈り取り機。国々により性能は全く違うようです。 古くても多くのコントロールレバーによって手刈りのように刈り取れる機械や、近年導入したという最新式でも刈り残しが多く目立つ機械、稲刈りコンバインの様にバリカンで刃を左右に移動させて刈り取る方式ではなく、刃を回転させながら刈り取る機械など様々です。

イギリス

BRITAIN

  • イギリスのラベンダー刈り取り機。

    イギリスのラベンダー刈り取り機。

  • ベルトコンベアで箱の中に送り込まれてゆきます。

    ベルトコンベアで箱の中に送り込まれてゆきます。

  • 箱が開き、幾つもの木箱の中に放り込まれます。

    箱が開き、幾つもの木箱の中に放り込まれます。

フランス

FRANCE

  • フランスのラベンダー刈り取り機。

    フランスのラベンダー刈り取り機。
    干ばつの年で色づきが良くありません。

  • 年季の入ったトラクタのベルトコンベアで運び込まれてゆきます。

    イギリスと同じくベルトコンベアで運び込まれます。トラクタも年季が入っています。

  • 作業員の手は止まることなく幾つものレバーを動かしています。

    手は止まることなく幾つものレバーを動かしています。とてもきれいに刈り取られてゆきます。

オーストラリア

AUSTRALIA

  • オーストラリアの刈り取り機。

    オーストラリアの刈り取り機。

  • トラクタサイドに刈り取り機を付けるタイプと違い、真後ろに機械を付けて刈り取ってゆくタイプ。

    トラクタサイドに刈り取り機を付けるタイプと違い、真後ろに機械を付けて刈り取ってゆくタイプ。

  • 刈り取っている瞬間。

    刈り取っている瞬間。奥にはラベンダーの花が見えますが、手前は刈り取られています。

 この機械であれば自社のトラクターに取り付けられると思い、生産者の好意もあって手に入れることが出来ました。海外から2年近くかけて届いたラベンダー刈り取り機。重厚な木枠を外し、地元の鉄鋼業者と共に秋から本格的な取り付け作業にはいりました。
 10個はあるよくわからないコントロールレバー。どこに取り付けるかわからないオイルボックス…など使いものになるのかと思いながら全て手探り状態でスタートしました。

刈り取られてゆくラベンダー

 刈り取り機の取り付けも無事終えて、形だけはどうにか整いました。とても高性能な機械で、微妙に違う株の大きさに合わせて数㎝単位で刈り取ることができます。10個のボタンが付いたコントローラーの使い方次第で、人の手で刈り取ったような仕上がりにもなれば、株が丸ごと抜けてしまったり、大量に刈り残ったりもします。
 また、花はいっきに満開になるので短期間で刈り取らなければなりません。雨が降っていても花は咲き進み、オイルの収量に影響するので作業を休むことができません。そのため何度かトラクターがぬかり、動けなくなったこともあります。
 今ではぬかるみに強いトラクターに変え、オペレーターの作業も慣れて、ミスなく一通りの作業を終えることができるようになりました。
 ただ、刈り取り適期や一連の作業の流れなど、まだ細部に渡っての課題があります。考え、楽しみながら問題点を乗り越えてゆこうと思います。